― 条文に書いていない本当の理由を解説 ―

親族に行政書士がいるなら、遺言書をお願いすれば安心ですよね?

遺言や相続のご相談を受けていると、
こうしたご質問をいただくことがあります。
たしかに、行政書士は遺言書作成をサポートできる専門家です。
それなのに、「親族の遺言は業務として扱えない」
と言われると、不思議に思われる方も多いのではないでしょうか。
実はこの問題、
法律にハッキリ書いてあるからダメという話ではありません。
この記事では、
- なぜ行政書士は親族の遺言を業務として扱えないのか
- どこまでなら関与できるのか
- なぜ第三者に依頼した方が安全なのか
を、できるだけわかりやすく、実務目線で解説します。
行政書士が自分の親族の遺言を扱ってはいけないという法律はある?
まず結論からお伝えします。
行政書士法や民法に、
「行政書士は親族の遺言を扱ってはならない」
と書かれた条文はありません。
この点は、意外に思われるかもしれません。
それでも実務の世界では、
「親族の遺言は、行政書士業務として受任しない」
という対応が、ほぼ共通認識になっています。
なぜそうなるのか。
理由は大きく3つあります。
なぜ「できない」と言われるのか|3つの実務上の理由
① 利益相反と中立性の問題
行政書士は、
依頼者の意思に基づき、中立な立場で書類を作成する専門家です。
ところが、遺言の作成を「親族」がサポートすると、
- 将来、相続人になる可能性がある
- 相続分に影響を受ける立場である
- 他の相続人と利害が対立する可能性がある
といった 利益関係を完全に排除できません。
実務では、
「本当に不正があったか」よりも
「不正を疑われる余地があるか」
が非常に重視されます。
親族が行政書士として関与している時点で、
中立性が疑われやすくなってしまうのです。
② 遺言無効・取消しリスクが高まる
遺言書は、
相続が発生したあとに争われることを前提とした書類です。
相続人の立場から見ると、親族行政書士が関与している遺言について、
- 「内容を誘導されたのではないか」
- 「判断能力が低下していたのではないか」
- 「専門家の立場を利用して影響を与えたのではないか」
と主張しやすくなります。
実際の裁判でも、
作成に関与した者が、相続で利益を受ける立場にある
という事情があるだけで、
遺言の信用性が大きく揺らぐことがあります。
せっかく作った遺言が、
「揉める原因」になってしまっては本末転倒です。
③ 行政書士法と職業倫理の観点
行政書士法では、
- 名義貸しの禁止
- 業務の公正性
- 品位保持義務
といった原則が重視されています。
親族の遺言を行政書士業務として扱うと、
- 身内のために専門資格を使っている
- 業務と私的行為の線引きが曖昧
- 第三者から見て不適切に見える
と判断されるリスクがあります。
違法性が明確でなくても、
外形的に問題があると見られれば、懲戒リスクにつながる
というのが実務の現実です。
公正証書遺言ではなぜ決定的に難しくなるのか
公正証書遺言では、必ず証人2名が必要です。
しかし、
- 親族
- 推定相続人
- 受遺者やその配偶者・直系血族
は、証人になることができません。
つまり、
親族である行政書士は証人になれない
という制約があります。
行政書士業務として関与しようとしても、
- 証人になれない
- 証人手配にも深く関与できない
結果として、
業務として完結しないという問題が生じます。
では、どこまでなら関与できるのか?

ここはとても大切なポイントです。
一般人としての助言
行政書士「として」ではなく、
一般人・親族としての助言であれば可能です。
- 遺言の種類の説明
- 書き方の一般的な注意点
- 手続きの流れの説明
ただし、内容を誘導したり、
特定の結論に導くような関与は避けるべきです。
無償なら大丈夫?
無償であっても、
行政書士として関与していると評価されるとリスクは残ります。
報酬の有無よりも、
「専門家として関与したかどうか」
が判断基準になります。
他の行政書士を紹介するのは?
実務上、もっとも安全で望ましい対応です。
- 親族案件は第三者の行政書士へ
- 自分は説明や橋渡しにとどめる
これにより、
- 中立性
- 遺言の有効性
- 将来のトラブル防止
すべてを守ることができます。
よくある質問(Q&A)
- 親族に行政書士がいる場合、遺言書作成を依頼できますか?
- 行政書士業務としての受任は原則避けるべきです。一般人としての助言にとどめるのが安全です。
- 行政書士法で明確に禁止されていますか?
- 明文の禁止規定はありませんが、実務上・倫理上の理由から扱わないのが通例です。
- 無償なら行政書士として関与しても問題ありませんか?
- 無償でも「行政書士として」関与すると、業務性が否定できずリスクがあります。
- ここにテキストが入ります。
- ここにテキストが入ります。
- 自筆証書遺言なら親族行政書士が関わっても大丈夫ですか?
- 形式的助言は可能ですが、内容誘導と疑われない距離感が重要です。
- 公正証書遺言で証人になることはできますか?
- 親族は証人になれません。
- 親族案件を他の行政書士に紹介してもいいですか?
- 問題ありません。実務上もっとも安全な対応です。
- 紹介料をもらうことはできますか?
- 報酬性・名義貸しと誤解されないよう慎重な対応が必要です。
- 行政書士の配偶者が遺言作成を有償で行うことは?
- 一般人としてであれば可能ですが、行政書士名義は使用できません。
- 親族が関与すると遺言は必ず無効になりますか?
- 直ちに無効にはなりませんが、争われやすくなります。
- なぜ第三者の専門家に依頼するのが安全なのですか?
- 中立性が担保され、後日の紛争リスクを最小限にできるからです。
まとめ|親族だからこそ第三者が必要

行政書士が親族の遺言を業務として扱えないのは、
- 法律で明確に禁止されているからではなく
- 中立性・紛争防止・職業倫理の観点から
- 「やるべきではない」と判断されているから
です。
遺言書は、
残された家族を守るための書類です。
だからこそ、
身内の善意よりも、
第三者の中立な専門家が関与することに大きな意味があります。
ご相談はこちらから!
