
相続した土地はいらないのですが、相続放棄と相続土地国庫帰属制度のどちらを考えればよいですか?

これは、とても多いご相談です。
名前は聞いたことがあっても、この2つは似ているようで、実はまったく違う制度です。相続放棄は、被相続人の財産に関するすべての権利義務を受け継がない制度であるのに対し、相続土地国庫帰属制度は、一定の要件を満たした土地についてその土地の所有権だけを国に帰属させる制度です。
そのため、
- 預貯金も土地もまとめて相続したくないのか
- 預貯金は受け取りたいが、土地だけ手放したいのか
で、考えるべき制度が変わってきます。
この記事では、
- 相続放棄と相続土地国庫帰属制度の基本的な違い
- それぞれどんな人に向いているのか
- 選ぶときにどこを比較すべきか
を、初心者の方にもやさしく解説します。
まず結論:この2つは「目的」が違います
まず一番大切なのは、制度の目的が違うということです。
相続放棄は、相続人が被相続人の財産や債務を一切受け継がないための制度です。
裁判所も、相続放棄を「被相続人の権利や義務を一切受け継がない」選択肢として案内しています。
これに対して、相続土地国庫帰属制度は、相続や相続人に対する遺贈で取得した土地について、一定の要件を満たせば特定の土地だけを国に帰属させる制度です。
法務省も、相続放棄との違いとして「本制度では、特定の土地の所有権のみを手放して国庫に帰属させることができる」と説明しています。
つまり、
全部いらないなら相続放棄、土地だけ手放したいなら相続土地国庫帰属制度の検討というのが基本的な考え方です。
相続放棄とはどんな制度?
相続放棄とは、相続人が、被相続人の財産も借金も含めて、相続そのものを受けないことにする制度です。裁判所は、相続放棄を「被相続人の権利や義務を一切受け継がない」制度として説明しています。
たとえば、
- 借金が多い
- 財産内容が不安
- 土地も預金もすべて引き継ぎたくない
という場合に検討されることがあります。
ただし、相続放棄は一部だけを選んで放棄することはできません。
「預金は受け取りたいけれど、売れない土地だけ放棄したい」という使い方はできません。
相続土地国庫帰属制度とはどんな制度?
相続土地国庫帰属制度は、相続または相続人に対する遺贈によって取得した土地について、一定の要件を満たす場合に、その土地を国に帰属させることができる制度です。
令和5年4月27日から始まっています。
この制度のポイントは、土地だけを対象にしていることです。
そのため、
- 預貯金は相続したい
- 他の財産も受け継ぎたい
- ただし、管理できない土地だけは手放したい
という場合に検討しやすい制度です。
ただし、どんな土地でも使えるわけではなく、建物がある土地、境界が明らかでない土地、管理に過分な費用や労力がかかる土地などは対象外になり得ます。
いちばん大きな違いは「対象」です

この2つの制度の違いを、初心者の方にもわかりやすく一言でいうと、
- 相続放棄は相続全体が対象
- 相続土地国庫帰属制度は土地だけが対象
という違いです。
相続放棄をすると、預金も不動産も株式も借金も、すべて相続しないことになります。
一方、相続土地国庫帰属制度では、他の相続財産はそのまま相続しつつ、一定の土地だけを国に引き取ってもらうことを目指せます。
期限
ここも非常に重要です。
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に申述しなければなりません。
裁判所の案内でも、この3か月の熟慮期間が明示されています。必要に応じて、期間伸長の申立ても可能です。
これに対して、相続土地国庫帰属制度には、相続放棄のような3か月の期限はありません。
法務省の制度案内でも、相続放棄のような短期の申述期限は示されておらず、相続登記が未了でも申請できる仕組みが案内されています。
そのため、
- まだ相続開始から3か月以内なら相続放棄も選択肢に入る
- 3か月を過ぎている場合は、相続放棄は難しく、国庫帰属など別の方法を考える
という整理が必要になります。
手続先
相続放棄の手続先は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。
一方、相続土地国庫帰属制度の申請先は、土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局本局の不動産登記部門です。
つまり、
- 相続放棄 → 家庭裁判所
- 相続土地国庫帰属制度 → 法務局
と、窓口自体が違います。
費用
相続土地国庫帰属制度では、申請時に一筆当たり14,000円の審査手数料が必要で、さらに承認後には原則20万円の負担金が必要です。
土地の種類や条件によっては算定方式で額が変わる場合があります。
一方、相続放棄は、家庭裁判所への申述手続で進める制度で、裁判所の案内では申述人1名につき収入印紙800円などが示されている例があります。
もっとも、郵便切手や戸籍等の取得費用は別途かかります。
申請時の費用だけでなく、長期的な負担との比較も大切です

「相続土地国庫帰属制度は負担金がかかるから高い」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、土地をそのまま持ち続けると、固定資産税がかかり続けるほか、草刈りや見回りなどの管理負担、将来の相続時の話し合いや名義整理の負担、相続人が増えて権利関係が複雑になるリスクもあります。
相続土地国庫帰属制度は、こうした不要土地の管理負担や所有者不明土地問題への対応として創設された制度です。
そのため、制度を選ぶときは、
今かかる費用だけでなく、土地を持ち続けた場合の維持費や将来の負担と比べて考えることが大切です。
どんな人に相続放棄が向いていますか?
相続放棄が向いているのは、たとえば次のような方です。
- 借金などマイナス財産が大きい
- 預金も不動産も含めて何も引き継ぎたくない
- 相続全体から離れたい
- 相続開始を知ってからまだ3か月以内である
このような場合は、相続放棄の方が制度の目的に合っています。
どんな人に相続土地国庫帰属制度が向いていますか?
一方で、相続土地国庫帰属制度が向いているのは、たとえば次のような方です。
- 預金など他の財産は相続したい
- 借金が問題というより、土地の管理が負担
- 売れない土地、使わない土地だけ手放したい
- 相続放棄の3か月を過ぎている
- 要件を満たす土地である可能性がある
このような場合には、土地だけを対象にできる相続土地国庫帰属制度の方が合う可能性があります。
ただし、どちらがよいかは財産全体を見て判断することが大切です
ここで大切なのは、土地だけを見て決めないことです。
たとえば、土地は不要でも、預金や他の資産が十分にあるなら、相続放棄をしてしまうとそれらも受け取れなくなります。
逆に、借金が多いなら、土地だけの問題として国庫帰属を考える前に、相続放棄を検討した方がよい場合があります。
つまり、
どちらの制度がよいかは、土地だけでなく相続財産全体を見て判断することが大切です。
豊中で相続した土地の対応に悩んでいる方へ

豊中にお住まいの方でも、相続した土地が遠方の空き地や山林、農地であることは少なくありません。
そのため、
- 相続放棄した方がよいのか
- 土地だけ国に帰属させることを考えるべきか
- まだ3か月以内なのか
- そもそも土地が制度の対象になりそうか
といった点で迷われることがあります。
当事務所でも、豊中を拠点に、相続に関する書類整理や手続きのご相談に対応しています。
相続土地国庫帰属制度についても、制度利用の見通しの整理、必要書類の確認、申請準備の流れの整理など、状況に応じてお手伝いできることがあります。
「相続放棄とどちらを考えるべきか整理したい」という段階でも、まずは全体像を落ち着いて確認することが大切です。
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