
こんにちは、キリヒラク行政書士オフィスの行政書士 小寺です。
今回も【ドローン飛行時の注意点完全ガイド】シリーズをお届けします。
今回のテーマは「飛行許可を取ったから安心」という油断が招く、事故・トラブルの実例とその対策です。
ドローン飛行には、許可を取っていても現場ごとに多様なリスクが潜んでいます。
初心者の方でも無理なく実践できるポイントを、事例を交えて具体的に解説していきます。
墜落事故の実例と原因・対策
実例
- バッテリー残量不足で着陸地点まで戻れず、雑木林に墜落
- 突然の突風で機体が煽られ、操作不能になり落下
- 操縦ミスで建物の壁に衝突。
原因
- バッテリーの残量チェック不足
- 気象条件(風速)の確認漏れ
- GPSの状況を常時確認していなかった
- 操縦集中力の低下・設定ミス
対策
- 飛行前に必ずバッテリー残量を2回確認。飛行計画も、余裕を持って設定
- 風速5m/sを超える場合は飛行中止。特に海沿いや山間部は突風リスクが高いので要注
- 小型機は突風の影響を受けやすいので、風速アプリなどでリアルタイム確認を
- GPSモードの状態確認と**フェイルセーフ設定(帰還設定)**の確認も必須。
- 飛行中は操作集中・状況確認を怠らないことが大切です。
バッテリー落下・破損トラブル
実例
- フライト中にバッテリーが外れ、地上の車のボンネットを破損
- 長時間飛行後、バッテリーが膨張し、突然の脱落。
原因
- 事前のバッテリー固定確認不足
- 劣化したバッテリーの使用
対策
- 飛行前にバッテリー装着のロック確認を必ず実施
- 膨張・変形・端子汚れのあるバッテリーは絶対に使用しない
- 事前に予備バッテリーも用意し、安全マージンを確保する
機体ロスト(行方不明)
実例
- 山林上空で電波ロストし、機体の位置がわからなくなり捜索不能
- 強風に煽られ、目視外に流され機体発見不能。
原因
- 飛行範囲の超過
- 電波干渉の多いエリアでの飛行
- RTH(帰還機能)の設定不備
対策
- 目視内・GPS位置確認可能エリアのみで飛行する
- DIPS飛行計画でエリア確認と干渉リスク事前調査を
- 機体には必ず電話番号入りの所有者ラベルを貼付
- RTH高度と帰還地点の設定確認を飛行前に必ず行う。
- 周囲に障害物や高層建物のない環境で飛行する。
- 目視外飛行は原則禁止し、必ず目視内で運航。
第三者との接触事故
実例
- 観光地で観客にドローンが接触し、軽傷発生
- 公園で遊んでいたペットに接触し怪我。
原因
- 安全距離不足
- 急な操作ミス
対策
- 催し場所では飛行範囲外30m・50m・70mの立入禁止区画を必ず確保
- 補助者を配置し、観客接近時は即座に操縦者に助言し回避行動を
- 必ずプロペラガードを装着する
映り込み・肖像権トラブル
実例
- SNS投稿した動画に通行人の顔がはっきり映り、削除要請を受ける
- 個人宅のベランダが映り込みトラブル。
原因
- 映像のチェック不足
- 肖像権への配慮欠如
対策
- 映像公開前に必ず映り込み確認を
- SNS・映像公開時には、肖像権やプライバシー配慮を徹底。人物の顔や車のナンバーはモザイク加工を行う
- 必要に応じて、イベント参加者には撮影承諾書の事前配布を
物損・ケガ発生時の連絡と初動対応
ドローン飛行中に第三者にケガをさせてしまったり、物を壊してしまう事故は、誰にでも起こり得ます。
そんなときに慌てず、誠意をもって適切に対応することが、その後のトラブル防止にもつながります。
ここでは、実際に事故が起こったときの現場での対応手順を具体的に解説します。
対応フロー詳細
まずは、人命第一です。
もし第三者にケガを負わせてしまった場合、以下の対応を行いましょう。
- すぐに相手の安否を確認。「大丈夫ですか?」と声をかける
- 出血・痛みがあれば応急処置(止血・冷却など)を行う
- ケガが重そうな場合は、すぐ119番通報し救急車を要請
救急車を呼ぶ基準に迷ったら、安全のため呼ぶ方が良いです。
ケガや物損の有無にかかわらず、被害者の方には丁寧に謝罪します。
その上で、今後の対応のため以下を確認・交換しましょう。
- 相手方の氏名・連絡先(携帯番号)を伺う
- 自分の氏名・連絡先も伝える
- もし可能であれば、当日の状況も簡単に記録する
このとき、言い訳や責任のなすりつけは絶対にNGです。冷静・丁寧に。
ドローン保険に加入している場合は、事故発生直後に保険会社へ連絡します。
連絡時に伝える内容は以下。
- 事故の日時・場所
- 事故の状況
- 被害の内容(ケガの有無・物損の状況)
- 相手方の氏名・連絡先
保険会社から指示がある場合は、指示に従って行動します。
後日の説明・保険対応のために、現場の状況をしっかり記録します。
- 事故現場の写真(ドローン、物損の様子、位置関係など)
- ケガをされた方がいれば、了承を得てケガの部位も撮影
- 当日の天候・風速・現場の混雑状況もメモする
スマホでOK。後のトラブル防止のため、記録はとても重要です。
国交省の包括飛行許可や個別許可を取って飛行していた場合、事故発生後に報告義務があります。
- 事故発生後、速やかに、DIPS2.0で事故報告書を提出
- 必要なら、許可を出した自治体や催し主催者にも報告
飛行許可申請の際に、事故時の報告義務が付されている場合が多いため要確認。
事故後の初動こそ信頼の分かれ道
事故の初動対応で誠意ある行動を取れるかが、その後のトラブル対応の鍵です。
ケガや物損の有無に関わらず、冷静に、迅速に、誠実に対応することで、トラブル拡大を防げます。
また、ドローン保険への加入と、現場での安全対策(補助者配置・安全距離確保)が、そもそもの事故防止につながります。
飛行許可があっても油断せず、常に慎重な運用を心がけましょう。
ドローン事故発生時に必要な「国土交通省への報告」について
ドローンの事故やトラブルが発生した場合、国土交通省への報告が義務となるケースがあります。
これを怠ると、許可・承認の取消しや今後の申請に悪影響を及ぼすことも。
正しいルールを知って、適切な手続きを行いましょう。
国土交通省に報告が必要となる事態
- 無人航空機による人の死傷(重傷以上の場合)
- 第三者の所有する物件の損壊
- 航空機との衝突または接触
- 無人航空機による人の負傷(軽傷の場合)
- 無人航空機の制御が不能となった事態
- 無人航空機が飛行中に発火した事態
- 航空機との衝突または接触のおそれがあったと認めた時
仮に軽微なトラブルでも、許可・承認取得済みの飛行なら報告義務が生じるケースがあるので注意が必要です。
DIPS2.0から事故報告を行えない場合の方法と報告様式のリンク
原則、事故報告はDIPS2.0の事故報告機能から行います。
ですが、もしシステム不具合や緊急性などでDIPS2.0から報告できない場合は、以下の方法で報告を行います。
報告方法
以下の宛先へメール・FAXで提出します。
- 許可・承認を受けた飛行 該当の許可・承認を発行した官署
※飛行許可・承認手続きを行った官署 - 許可・承認を受けていない飛行
※カテゴリーⅠ等の飛行 飛行した場所を管轄する官署
使用する報告様式
- 様式のダウンロード
➡ Excel: 無人航空機に係る事故/重大インシデントの報告書
報告時は、事故発生日・発生場所・状況・被害状況・対応状況などを正確に記載します。
落下しているドローンを発見した場合の第三者への注意事項
現場で自分のドローンが墜落・落下し、第三者が近づこうとしている場合は、以下の点を丁寧に説明して注意喚起しましょう。
- ドローンのバッテリーは破損・発熱・発火の恐れがある
- 回転しているプロペラは刃物。発見時に止まっていても急に動き出す可能性があるため、機体に近づかないようにする。
- 軽傷と思われても触らずにその場から離れるよう促す
- できれば周囲5m程度の立入を一時制限し、安全確保
- ケガをされた方には、速やかに応急処置・救急要請・謝罪
特にリチウムイオンバッテリーは内部ショートや発火の危険性もあるため、不用意に触れないよう周知するのが大切です。
まとめ:飛行許可取得後こそ慎重に
ドローン事故の多くは「少しぐらい大丈夫だろう」という油断が原因です。
許可・承認を得たからこそ、安全管理と現場確認を徹底することがプロとしての責任。
ぜひ今回の事例と対策を参考に、自分の飛行スタイルを今一度チェックし、安全で楽しいフライトを行いましょう。
次回予告
次回は――
「SNS投稿・映像公開前のチェックポイントと同意の取り方」
をテーマにお届けします!
ドローンで撮影した動画や写真をSNSやYouTube、ホームページにアップする前に、必ず確認しておきたい注意点を徹底解説。
- 肖像権・映り込みの注意点
- 背景の看板・企業ロゴ・建物の権利問題
- 映像の商用利用時の注意点
- 実際に使える映像利用同意書のひな形も紹介!
知らずに投稿してしまうと、削除依頼やトラブルの原因になることも…。
次回も初心者さんにもわかりやすく、実例と対策を丁寧にまとめてお届けしますので、ぜひお楽しみに!
ご相談はこちらから!