
キリヒラク
こんにちは。キリヒラク行政書士オフィスの行政書士 小寺です。
橋梁・鉄塔・ダムなどのインフラ点検において、ドローンの活用が全国で加速しています。
しかし、

リク
そもそも許可は必要?

アイミ
墜落や事故が起きたらどうする?

キリヒラク
と不安を感じる企業様や自治体も少なくありません。
この記事では、行政書士として多くのインフラ点検許可取得をサポートしてきた筆者が、ドローンによるインフラ点検の許可・実務・安全対策・トラブル対応までわかりやすく解説します。
ドローン点検がインフラ業界で求められる3つの理由
橋梁・ダム・送電鉄塔などのインフラは老朽化が進み、早期発見と継続的な点検が重要です。
従来は高所作業車・仮設足場・ゴンドラ・潜水など大掛かりな手法が必要でしたが、ドローンなら以下のようなメリットがあります。
メリット | 内容 |
---|---|
効率化 | 仮設不要、短時間で広範囲の撮影が可能 |
安全性 | 高所や水上の危険作業を削減できる |
記録性 | 同じ地点・角度での定点記録が可能 |
点検対象別|飛行の難易度とリスク
橋梁(高速道路・鉄道橋など)
- 橋の下を通る飛行
→ 衛星電波が届かないケースが多く難易度高 - 落下リスク=交通妨害に直結。
→ 2人体制以上+フライト補助要員必須
鉄塔(送電線・通信塔)
- 高所・電磁波干渉・複雑な構造 → 電波対策・飛行安定性が鍵
- 天候(風速・湿度)に特に敏感
ダム・堤体・水路
- 強風・水面への反射・衛星電波遮断
→ 手動操作能力が重要 - 人工構造物と自然地形の融合部が特に危険
ドローン飛行に許可が必要となるケース
「点検のためだから許可はいらない」と思っていませんか?
実際には、ほとんどのケースで国交省の許可・承認が必要です。
許可・承認が必要な主な条件
- 人口集中地区(DID)内での飛行
- 第三者上空を通る可能性がある
- 目視外・夜間・物件接近飛行を行う
- 国有地・ダム・鉄道施設等の管理区域を通過
- 衛星電波が効かない場所での手動制御
点検業務の基本的な流れ
橋梁・ダム・鉄塔など、インフラ点検においては「許可取得・安全管理・飛行結果の記録」という一連の流れを、段取り良く、正確に、漏れなく実行することが求められます。
現地確認・ロケーション調査(現地 or GIS)
- 地形、周辺交通量、GNSS信号状況などを確認
- 国土地理院地図やGoogle Earth、地番図、管理者台帳を用いる
- ドローン飛行可能かどうかの初期判断を行う
インフラの構造・規模を把握し、撮影要件を明確化
- 点検対象の種類(橋長、塔高、堤高など)を確認
- 必要な解析内容(クラックの有無、腐食、破損など)を精査
- 撮影要件:静止画 / 動画、真上撮影 / 側面撮影、3D化の有無など
飛行計画の設計
- 機体選定(カメラ性能、耐風性、GPS性能など)
- 飛行経路の設計(安全高度、進入角度、補助者配置)
- 衛星電波ロストや目視外となるエリアをマーク
周辺への調整・説明
- 地元自治体・管理者(国交省、都道府県、市町村など)への説明
- 通行人・交通への配慮(通行止め、案内看板の設置など)
- 住民への事前通知や掲示(特に都市部や生活道路付近では重要)
行政手続き(下記で詳細解説)
飛行当日の運用手順
- 点検前の安全ブリーフィング
- 機体点検(バッテリー、プロペラ、センサー、ログチェック)
- 飛行前の周辺監視体制(補助者配置・通信確認)
- 飛行後:データ確認→バックアップ保存
撮影データの整理・解析
- 静止画のリネーム・整列・メタデータ記録
- 点検対象へのマッピング(位置情報付きで台帳連携)
- 必要に応じて点群データや3D化も行う
行政手続きと必要書類(橋梁・ダム等)

国交省へのDIPS申請で必要な主な書類
書類名 | 内容 |
---|---|
⬛ 飛行許可・承認申請書 | 「DID」「目視外」「物件接近」「夜間」などを必要に応じてチェック。飛行日程、場所、方法を明示。 |
⬛ 飛行マニュアル | 安全管理体制、補助者の配置、緊急時の対応、連絡網、立入禁止措置などを詳細に記載。国交省標準マニュアル or 独自マニュアルを選択可能。 |
⬛ 飛行ルート図 / KMLファイル | Google Earth Proや地図アプリで作成。高度・進入方向・補助員配置・目視区間を明示。 |
⬛ 機体情報・整備記録 | 機体ごとの型式、使用回数、整備履歴、安全装置の有無(フェイルセーフ等) |
⬛ 操縦者実績・資格証明 | 飛行日誌・民間ライセンス(JUIDA等)・技能証明(無人航空機講習修了など) |
⬛ 対人・対物保険証書 | 補償額:最低1億円推奨。契約内容のコピー提出。 |
⬛ 地権者または管理者の同意書 | 橋梁→道路管理者、ダム→河川・水資源機構、鉄塔→電力会社など。書面同意が必要になることが多い。 |
よくあるトラブルとその対策(現場別)
トラブル | 現場の例 | 具体的対策 |
---|---|---|
衛星電波ロスト → 橋桁に激突 | 橋梁下部飛行時 | 事前に「ATTI(衛星電波無し)操作訓練」+補助者の誘導体制を構築 |
鉄塔から電磁波干渉 → 制御不能 | 通信塔・送電線付近 | 機体を干渉対応モデルに変更(例:DJI Matriceシリーズ)+緊急停止手順を明示 |
飛行中に住民通報 → 警察対応 | 住宅地付近のダム点検 | 事前周知文の掲示+飛行中はベスト・腕章・看板などで作業中表示 |
機体の風速耐性を超過 → 墜落 | ダム上空(風が強い谷間) | 事前に気象データを取得、最大耐風性の高い機体選定+中止基準を明文化 |
申請書類の記載ミス → 許可下りず | 国交省申請 | 行政書士チェックによる「ダブルチェック」体制を整備 |
まとめ
インフラ点検にドローンを導入することで、効率化・安全性・継続的な記録管理が実現できます。
ただし、対象物によっては「高度な操縦技術」や「複雑な許可・承認」が求められます。
まずは、飛行条件や管理者調整の必要性を行政書士にご相談いただき、許可が必要か・どう進めればよいかを判断しましょう。
よくある質問(FAQ)
- ダム上空で飛行するとき、河川管理者の許可も必要?
- はい。ダムの管理者は国交省・都道府県などに分かれており、それぞれ別の調整・書類が必要になることがあります。
- 衛星電波が入らない場所でも許可が出ますか?
- 「手動操作の訓練」「機体のフェイルセーフ」「補助者配置」などを整えれば許可が下りるケースもあります。
- 点検の際の撮影データはどう保存すればよい?
- JPEG/RAW画像に加え、動画・オルソ画像・三次元データなど用途に応じて保存。
最低1年間の保管が望ましいです。
ご相談はこちらから!